君は誰?2

私は男の子に尋ねました。

「お母さんはどこにいるの?」

かれはきょとんとして何度も首を横に振ります。

「お父さんと来たの?」

すると彼の顔はにわかにこわばり(マンガのようにわかり易かったです)

「パパない!パパない!」と私から後ずさったのです。

 

(そうか、パパと来てるんだ)

ためしに「それじゃあ、おじいちゃんとかおばあちゃんと来てるの?」

彼は平常に戻り、また首を横に振りました。

 

施設内にはゲームコーナーがあり、隣には地続きでパチンコ店もありました。

私はこの子のお父さんはこの施設の常連で、この子もこちらの常連だと推測しました。言葉も思うようにしゃべれない小さな子が、1時間も自由時間を満喫できるのは余程に慣れているからなのでしょう。

店内のスタッフにとってもいつものことなのかもしれません。

 

 

男の子はしばらく私についてきましたが、2Fから1Fへおりる階段にさしかかると急に立ち止まりました。そして小さな手を一生懸命左右に振って「バイバイ!」と言いました。

「ここでバイバイするの?わかった、バイバイね」

 

 

念のためこの子のことを店員さんに伝えておこうと受付に行くと

先に道具を返却して私を待っていた旦那と息子が心配そうにしています。私は2人にいきさつを話して「大丈夫だと思う」と言いました。2人は少し安心して「折角来たんだし、卓球も1時間していこうよ」と言いました。(もしかすると、男の子のことを気にしている私の心を汲んでくれたのかもしれません)

 

 

私達はまた2階に戻り、ビリヤード場とは階段をはさんで反対側にある卓球のコーナーへ行きました。2F全部を見まわしましたが、男の子の姿はありませんでした。

 

 

10分ほど卓球を楽しんでいると階段方向から気配がしました。

予想通り、それはそれは嬉しそうに彼が走ってきたのでした。

「おいおいおまえら、こんな所にいたのか。俺聞いてないぞ~」

(トニートニーチョッパー風)って感じの、はじける笑顔です!

 

旦那と息子が試合中だったので、私は壁に背中をつけて審判をしていましたが、彼も私の真似をして隣にきて観戦しはじめました。

「ぶつかると危ないから、お背中を壁にぺったんこして見ようね」と言うと頷き、言う通りにしています。

 

試合が白熱し、オーッ!わー!と盛り上がるたび、彼のパフォーマンスは派手になっていきました。一緒になって喜びガッツポーズをしています。そしてやはり自分もやりたくなってしまいました。当然ですね。そして旦那のところへ歩み寄り交渉を始めたのです。

 

まず自分の顔を指差し、次にラケットを指差しました。

「え~ホントに!?やってみる?」「(うんうん!)」

やる気満々です。

 

旦那はラケットと球を渡しましたがやはりうまく打てません。

結局、隣の台で私と練習することになりました。

 

                              (またつづく)